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取締役鼎談 ーCEO×取締役副社長執行役員 CTO×社外取締役ー

2026年9月

取締役鼎談 ーCEO×取締役副社長執行役員 CTO×社外取締役ー

顧客志向を軸に、経営基盤の強化と科学的アプローチを推進し、
収益力・人的資本・ガバナンスの向上を通じて新たな価値創造に挑みます。

外部環境の変化と対応の方向性

2025年度は、原材料価格の上昇や円安、ミールバリューの低下に加え、資材費、エネルギー費、物流費、人件費といったインフラコストの上昇が続くなど、厳しい外部環境にありました。こうした中、当社グループは安定供給を最優先としながら、価格改定の完遂と業務変革に注力しました。しかしながら、当初想定した財務目標は未達となる見込みです。今後は、足元の収益力の回復に加え、中長期的な成長戦略の実現に向け、基礎収益力の強化や事業構造の見直しを含めた、より本質的な対策を実行する必要があります。
一方で、長年にわたり培ってきた顧客基盤や、技術・マーケティング力、「おいしさデザイン®」に代表される価値創造力は、競争優位性の源泉です。これらをより高度に活用し、次の成長につなげていきます。

変化の激しい事業環境の中、迅速かつ柔軟な対応が求められています。技術面では、既存事業の着実な成長について、一定の貢献を果たすことができました。一方、新規事業への貢献、中長期的な成長への寄与という点で、改善の余地があると考えていました。その要因の一つとして、事業単位で分かれた開発組織や拠点体制により、油脂およびスペシャリティフードの事業連携によるシナジー発揮が十分でなかった点が挙げられます。そのため、2025年度には研究開発組織の再編、統合を図り、シナジーの発揮を図ることで変化の激しい事業環境に対して迅速かつ柔軟に対応する体制としました。2026年度には拠点の統合、移転を進めることで、シナジー発揮と対応力の強化を加速し、中期的な発展への貢献につなげていきます。

社外取締役(独立役員) 池田 安希子

近年、不確実性が一層高まっていますが、当社グループの事業特性上、さまざまな変化を前提として捉える必要があります。取締役会においてもこの認識を共有し、変化を回避するのではなく、競争優位へと転換していく視点で議論が重ねられています。取り組むべき課題の優先順位を明確にし、柔軟かつ迅速に意思決定できる体制の強化に取り組んでいます。こうした変化への対応を着実に進めることが、中長期的な価値向上につながるものと考えています。

「顧客志向」を軸としたコア事業の強靭化

このような現状認識を踏まえ、旧事業会社の創業から数えて「200周年」を迎える今年、あらためて原点に立ち返ることを決めました。その原点とは、前身の3社が共通して大切にしてきた商売の基礎でもある「顧客志向」です。客観的なデータに基づき顧客のニーズを的確に捉え、そこから価値を生み出す。この考え方を当社グループの中心に据えます。
その上で、コア事業はdXの活用を含めた業務プロセスの変革と徹底した効率化を推進することにより、安定収益基盤(キャッシュカウ)へ進化させます。コア事業の効率化により創出する経営資源は、中長期的な成長を実現するために選定した注力領域に投下していきます。こうした取り組みを通じて、事業構造の変革を着実に進め、さらなる企業価値の向上につなげていきたいと考えています。

コア事業である油脂事業においては、dXの活用により全社最適化を図ります。dX推進リーダーとして、生産現場における省人化・自動化、研究開発の効率化、価格シミュレーション、マーケティングの投資採算性、物流の見える化などサプライチェーン全体の効率化を進めます。これらは単なる効率化にとどまるものではなく、事業の競争力そのものを引き上げるビジネス変革と位置付けています。従来の経験依存からデータドリブンな意思決定へと転換することで、環境変化への対応力を高め、安定的な収益基盤の構築につなげていきます。

こうした変革の取り組みを進める上では、企業カルチャーも重要な要素となります。安全・安心・品質を重視してきた当社グループの強みは堅持すべき前提である一方、従来変えることができなかった領域に踏み込むには、従業員一人ひとりの意識変革が不可欠です。 その起点となるのは、目指すべき未来(ビジョン)の明確化と浸透です。経営陣の下で、自社のあるべき姿を再定義し、現場への丁寧な発信を重ねている点は評価でき、変化に向けた兆しは着実に表れつつあります。

注力領域の明確化によるポートフォリオ高度化

中長期的な成長を実現するための注力領域として、統合ソリューションデザイナーへの進化、生活者未充足ニーズの解決、サステナビリティへの貢献の三つを選定しています。当社グループの技術力や顧客基盤といった強みを踏まえ、事業との親和性が高く、かつ成長性が見込まれる分野となります。統合ソリューションデザイナーへの進化では、従来の油脂・スターチなどの製品提供にとどまらず、「おいしさ」を実現するプロセスそのものに踏み込むことで、これまでにない課題解決の価値を提供します。生活者未充足ニーズの解決では、健康、時短、体験といった、生活者ニーズの多様化に対応していきます。サステナビリティへの貢献では、環境・社会価値への貢献を、明確な差別化要因として位置付けていきます。

取締役副社長執行役員CTO 兼 研究開発統括部長 近藤 一也

この三つの注力領域を踏まえ、技術開発についても対応を開始しているところです。統合ソリューションデザイナーへの進化については、顧客ニーズを科学的に解明し価値創出へつなげるアプローチと、おいしさを因子分解・数値化して定義し、評価と改善提案を行うアプローチを進めています。いずれも簡単な取り組みではありませんが、これらによりおいしさが数値で語れるようになり、技術とセットで提案することで、お客さまの潜在ニーズも解決できるようになることを目指しています。
生活者未充足ニーズの解決については、油脂、スペシャリティフードの各事業で重なる領域や周辺領域に対しての技術、商品開発をスタートしています。研究開発拠点の統合・移転が2026年度に完了し、シナジーが発揮されることで、今後の早期の成果創出を期待しています。
サステナビリティへの貢献では、長持ち油「長徳®」や紙パック油「紙らくパック®」、中期的な視野を持ったSAF(持続可能な航空燃料)の開発を行っており、その開発の加速化による早期の成果創出を目指します。一方、サステナビリティへの貢献と企業の成長を同時に成し遂げる観点から、さらに進んだ商品やサービスの開発が必要であると感じており、2026年度は取り組みを具体化していきます。

ナショナルチェーンストアの小売におけるマネジメント経験を踏まえると、顧客のパートナーとして価値を提供していく上で、経験や定性情報に加え定量データに基づく科学的アプローチは重要だと考えています。こうした取り組みを通じて「おいしさデザイン®」を進化させ、顧客企業からの評価を高め、成長につなげていくことが期待されます。

三つの注力領域に経営資源を投下することにより、事業ポートフォリオの高度化を実現する考えです。具体的には、既存の油脂やスペシャリティフード事業を基盤とした川下展開や、油糧(ミール)や副産物の価値最大化、「おいしさデザイン®」のASEAN展開など、既存事業とのシナジーを軸とした周辺領域への拡大を進めます。
成長領域におけるスピードと実行力を高めていく上では、外部との連携やM&Aを通じた技術や事業基盤の獲得を戦略的に進めていくことが不可欠です。必要な領域には適切に投資しながら、ポートフォリオ高度化を加速していきます。

技術者の視点から当社グループを見た際、保有する技術の水準は非常に高いと認識しています。一方で、こうした強みをさらに発展させていく余地も大きいと考えています。具体的には、事業や領域ごとに培ってきた技術を横断的に組み合わせることで新たな付加価値の創出が可能である点です。技術による顧客価値提供を、より直接的に事業成長や収益に結びつけていくことで、技術のポテンシャルを一層高めていく必要があります。当社が掲げる周辺領域への展開において、既存の技術基盤そのものが重要なドライバーになると捉えています。

ポートフォリオの高度化や技術基盤を事業成長につなげる上では、付加価値の高い商品を創出するだけでなく、それを誰に、どのように届けるかまで含めて設計し、事業ポートフォリオ全体で価値を最大化していくことが重要です。例えば、オリーブオイルのような高付加価値市場においては、汎用品とは異なる価格水準であっても受容され、選択されています。そのような領域においては、消費者の選択理由を捉えるために付加価値訴求の高度化が求められます。その実現に向けては、組織全体の有機的な連携が不可欠です。

現在、次期中期経営計画の策定を進めており、コア事業の強靭化、および三つの注力領域の設定を軸に、具体的な事業展開とロードマップ、その実現に向けた投資方針について検討しています。特に、事業ポートフォリオの高度化を見据え、リスクとリターンのバランスを踏まえ適正な経営資源の配分を意識しながら、より実効性の高い計画とすることを重視しています。内容については、来年5月の公表時に示す予定です。

コーポレートガバナンスと取締役会の進化

Representative Director, President and CEO Yuichiro Haruyama

コーポレートガバナンスの強化についてさまざまな取り組みを実施していますが、取締役会としては、コーポレートガバナンス・コードにも示されているとおり、「経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備」が重要と考えています。その観点から、監査役会設置会社としてのモニタリングボードの在り方を含め、健全なリスクテイクを支える環境整備に向けて議論しています。
具体的には、長期的な成長に関する議論についてその充実を図るため、議題の優先順位付けや時間配分の見直しを行い、より十分な議論機会の確保に取り組んでいます。ルーティンの報告は簡潔にしつつ、長期テーマについては、年間スケジュールに基づいて議論を深めています。こうした取り組みにより、取締役会の実効性評価においても改善が見られています。

必要な情報が適時・適切に共有される体制が整ってきており、優先順位を踏まえた議論が可能になっています。引き続き、社外取締役として、企業価値向上に資する建設的な議論に貢献していきたいと考えています。

人的資本経営の高度化

中長期的な成長の実現には、従業員のポテンシャルを最大化するための環境の整備、すなわち人的資本経営が極めて重要です。人的資本経営は、人財育成、健康経営・ウェルビーイング、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)などで構成されます。その中でも、現時点では人財育成が最重要テーマだと考えており、2025年度に設置した人財委員会を通じて、次世代経営人財の育成基盤を整備するなど、成長戦略を実現する人財の育成に取り組んでいます。また、これらの取り組みの成果を測る指標の一つとして、従業員エンゲージメントスコアをモニタリングしています。2025年度は依然として課題が認められるものの、全ての指標で前年を上回りました。引き続き改善に向けた取り組みを推進していきます。

研究開発部門では、他部門に先駆けて既存のコンピテンシーマップをさらに細分化し、研究員全員の評価を実施しました。2026年度は、その評価に基づいた教育とローテーションにつなげていく予定です。この取り組みを今後は全社にも展開していきます。専門性を伸ばすことも重要ですが、バックグラウンドの違うメンバーが集って「共創」を起こす仕掛けが必要です。研究開発部門がその先駆けとなることを目指しています。

現在の人的資本経営の取り組みは、やや開示を目的とした側面もみられると感じています。本質的に重要なのは、「なぜそれが必要なのか」という点です。これから策定する中期経営計画を実現するのは人であり、経営戦略と一体となった採用、教育、配置、評価などの人財戦略を実行していくことが重要です。今後はその方向へ変えていく必要があると考えています。

当社グループが目指す企業像

当社グループは、「Joy for Life® -食で未来によろこびを®-」を目指すべき未来(ビジョン)として定めており、経営における最も重要な考え方と位置付けています。長きにわたり日本の食文化を支えてきた企業として蓄積した知見を基に、グローバルレベルで、人々の暮らし、すなわち健康や環境、食資源の持続性に貢献していきたいと考えています。外部環境が大きく変化することが想定される中にあっても、社会の変化を先取りし、イノベーションを通じて新たな価値創出に取り組んでいきます。

これまでのイノベーションの創出は、プロダクトアウト型が中心であり、特に技術者はその傾向が強かったと感じています。今後は、技術者もマーケットを意識したイノベーション創出が必要であり、そのための人財育成に加え、AIなども活用しながら市場変化を把握し、価値創造のスピードと質を高め、イノベーションを創出していきます。

「生きることは食べること」だと考えています。食のインフラを担う企業として、当社グループは社会に必要とされる存在であり、替えのきかない企業であり続けることが重要です。企業価値を着実に高めていくとともに、働くひと、一人ひとりが幸せだと実感し、誇りを持てる企業であることを期待しています。

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